PK <伊坂 幸太郎さん>

2012年3月20日「PK」を読みました。<ネタバレ注意>

  • 感想 <PK>

    • 読みすすめればすすむほど、「あれ?この話、どっかで読んだ気がする」
      という場面が増えてくる。
      読み終えたとき、すべてがつながっていた、という気持ちよさを感じつつ、
      もう一度、時系列を確認したくて、再読したくなる。
      誰か、解説してくれ~って思った。でも、やっぱり、自分で理解したい。
      だから、何度も、何度も、ページをめくった。
      それほど、面白さと、不思議さと、もやもやが混在している話だと思った。

      この話は、東日本大震災の前に書かれたものらしい。
      だけど、震災のことを彷彿させられる。
      伊坂さんこそ、未来を予知できる能力があるのではないかと思うほどだ。

      「仙台ぐらし」という伊坂さんのエッセイも、最近、出版された。
      この本を読んだあとで「PK」を読むと、より楽しめると思う。
      多くの人に、「仙台ぐらし」と「PK」を読んでもらいたい。
      そして、多くの勇気を伝染させてほしいと思う。
                         (2012年3月20日)


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      2014年11月 「PK」の文庫本が出たので、再読しました。
      文庫本「PK」を読んで、いろいろと想像を膨らませました。
      わたしの感想を含めた、想像の話はブログ「紙飛行機文庫」に書きました。
                         (2014年11月21日)
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  • あらすじ <PK>

    • 「PK」
      「超人」
      「密使」
      3部作の構成となっている。

      それぞれ、雑誌に掲載されたものを、単行本にまとめるにあたり、
      伊坂さんが、少し手を加えて、より繋がりを楽しめるものにしたそうだ。(あとがきより)

      「P K」 サッカーのワールドカップ予選で、小津がPKを決める
               ・主義や信念、勇気を試される話
      「超人」 本田には特殊な力があり、不思議なメールを受け取る
               ・過ちを認めることからはじまるという話
      「密使」 過去に密使が派遣されるという、タイムトラベルの話

      これら3部が、過去・現在・未来でつながっていく話である。
                            (2012年3月20日)

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      2014年11月 「PK」の文庫本が発売になりました。
      その時期に、伊坂幸太郎さんは「IN★POCKET」に「もうひとつのあらすじ」と題して
      エッセイを寄せていらっしゃいます。
      そこには「PK」は「!」と「?」を掛け合わしたものを目指したと書かれています。

      わたしは「!」と「?」を十分に楽しませていただき、満ち足りた気分になりました。
                           (2014年11月21日)


    好きな言葉 <PK>

    • 「PK」
      この小説の中にも、いい言葉だなぁと思うフレーズがあった。
      それを、ここに残しておきたいと思う。 (2012年3月20日)

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      パパ、次郎君を助けてあげて、と子供たちが訴えてくる  p26
        子供たちをしつけるために、架空の「次郎君」の話をする父親。
        それを信じて疑わない子供がかわいい。

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      たとえば、未来は素晴らしい、と子供に教えるのと、
      未来は暗い、と正直に教えるのとではどちらがいいのか
        p36
         やっぱり、未来は明るいと思いたい。
         そうじゃないと、前向きに生きていけないよ。

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      決断を求められる場面が、人には突然、訪れる。
      勇気の量を試される。
                            p44
         決断を求められるということは、勇気の量を試されることなのね。
         うん、確かにそうかも。

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      子供たちに自慢できるほうを選べばいいんだから      p52
         うん、うん。この選択方法はいい。
         選択に迷った時の基準としては最高だわ。

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      臆病は伝染する。そして、勇気も伝染する          p74
         心理学者のアドラー氏の言葉らしい。
         すごく、心に響く言葉だ。自分が勇気を出せば、まわりにも伝染する。

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      努力しない人間はさ、努力なく欲望を叶えるために、
      物騒で、身勝手な事件を起こす。
                      p98
         ほんと、身勝手な人って、自分の欲望しか考えてないよね。
         
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      私は死ぬ。そうなるはずであったのに、私はまだ、いた。
      掬い上げられた。遠くの歓声はまだ止まない。
              p212
         自分の存在を多くの人が喜んでくれている。
         なんて、幸せなことでしょ。うれしくなってくる。


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      心を豊かにしてくれる伊坂幸太郎さんの言葉集*名言「本棚のしおり」はこちらです

    3話のつながり <PK>

    • 「PK」 「超人」 「密使」 3部作の構成となっているこの本は、
      過去・現在・未来が織り交ざっているので、わたしなりに整理してみた。
      わたしなりの解釈で、想像・予想なので、伊坂さんの意図とは、かけ離れたり、
      多くの伊坂さんファンの皆様とは違う意見になるかもしれませんが、
      そこは、「小説を楽しむ」ということで、ご勘弁くださいませ。
      以下、ネタバレを多く含みますので、未読の方はご注意ください。

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      この本は「PK」「超人」「密使」の順で収録されている。
      だけど、それぞれがどのようにつながっているかを考えてみるとき、
      「密使」を最初に読み、その後「PK」と「超人」がそこから派生した話だとととらえて
      読んでみるとわかりやすいのではないかと思う。

      「密使」では、未来の人間が過去に、ほんの少しの変化を与え
      未来をより良いものに変えるという話だ。

      まず、青木豊計測技師長がいる「飛脚」グループ時代では「私」に仕事を依頼する。
      その時代よりさらに未来の「宅配便トラック」グループ時代は「僕」に仕事を依頼するのである。

      その「密使」が「PK」と「超人」とどのようなつながりがあるのか。

        「実は、彼らの目的も最終的には、我々と同じなのです。
         耐性菌の蔓延を防ぐ。そのために働いています。」      (P209より)

      「飛脚グル―プ」時代の青木豊計測技師長たちは、将来、耐性菌が蔓延することを予測している。
      そしてその予測通り、耐性菌は蔓延してしまった。それが「宅配便トラックグル―プ」時代だ。
      どちらの時代の、どちらのグル―プも、耐性菌蔓延を防ぐために行動をしている。
      過去に分岐点がいくつかあった。
      その分岐点に変化を与えて、耐性菌の蔓延を防ごうとしているのだと思う。

      (1)1960年ごろの分岐点
           夫が浮気をする  → 妻に浮気がばれる
             〃      → 妻に浮気はばれない   

      (2)2002年の分岐点
           サッカーのワールドカップ  → フランスで開催される
                〃        → 日韓の共同開催となる

      (3)2011年の分岐点
           大臣が偽証することを求められる → 偽証する
                  〃        → 偽証しない

      (1)と(2)の分岐点に変化を与え、いずれの道へ進んでも(3)へ辿り着くように流れを作った。
      2011年、大臣は勇気の量を試される。

      キーワードは「臆病は伝染する。そして、勇気も伝染する」だろう。

      「臆病は伝染する」
      この「臆病」は「耐性菌」のことを表わしているのかもしれない。

      不安や臆病な気持ちを払しょくし、過ちを認め、信念を貫く。
      拳を天に向けて伸ばし、突き上げることのできるほどの勇気をもって行動すれば
      その勇気は多くの人に伝染する。
      勇気が伝染すれば、耐性菌の蔓延を防ぐことができる。

      大臣は勇気の量を試される。

      「密使」の耐性菌蔓延を防ぐ話は、
      大臣の勇気の量を試す話である「PK」と「超人」へとつながる。
      3話のつながりは、そういうことではないかと思う。

      わたしは、このように想像して、この小説「PK」を楽しみました。
      この本は、いろいろな想像を膨らますことができるお話だと思います。
      楽しいお話をありがとうございました。
      伊坂幸太郎様に感謝です。
                         (2014年11月21日)
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    登場人物の関係を考える <PK>

    • 「PK」に登場してくる人物の関係を考えてみようと思う。
      あくまでもわたしの想像ですので、あしからず。

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      (1)「作家に修正を促す男」 「青木豊計測技師長」 
       「PK」の中に出てくる、作家に修正を促す背広の男と、
       「密使」の中に出てくる、青木豊計測技師長は、同一人物ではないかと思う。

       P21  「PK」
       作家に修正を促す男は、の話をする。

       P167 「密使」
       青木豊計測技師長は、の話をする。

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      (2)「私」 「本田毬夫」
       「密使」の中に出てくる「私」と、
       「超人」の中に出てくる本田毬夫、
       すなわち、「PK」の中に出てくる、マンションのベランダから落下した幼児は、
       同一人物ではないかと思う。

       P212  「密使」
       零時を回った直後、私はぎゅっと目を閉じた。(中略)
       落下する感覚があった。暗い中を、加速しながら真っ逆さまに。
       声も上げられぬ幼児、もしくは幼児と化したかのようだ。
       どこかの幼児とつながった。

       P130  「超人」
       そこに紛れるように、ひゅうっと横切った風が、「君には役割があるからね」と
       囁いたのだが、その言葉は彼の頭にすっと沁み込み、消える。「これがこうなります」
       と誰からか説明を受ける感覚があった。(幼児=本田毬夫の言葉)

       P70   「PK」
       数秒にも満たない時間だったかもしれないが、ひどくゆっくりと幼児が落ちてくる。

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      (3)「三島」 「青い服の男」 「俺」
       「超人」の中に出てくる三島、青い服の男、俺、は同一人物ではないかと思う。

       P83     「超人」
       三島は頭が切れる。(中略)上空から獲物を探す猛禽類(もうきんるい)の目のように
       眼光は鋭く、(中略)常に何らかの物事を思案している印象がある。(中略)
       スーパーヒーローに目がなく、その仕草や恰好を真似、悦に入ることもよくあった。
       ・・・・・(略)壁に顔をくっつけるようにし、説明をしてきたこともある。

       P140~142  「超人」
       たとえば大きな嘴(くちばし)を持った怪鳥が、鋭い角度で滑空し、背広の男たちを
       一人ずつ啄み、放り投げる。 (中略)
       先ほどの、あの青い服の男は何とスマートで、美しいのか。

       P145     「超人」
       は壁から体を離す。・・・(中略)
       「あんた、レストランにくっついて何してたんだよ」と背後から声をかけられた。

       
       P141     「超人」
       「君も闘っているのか」「俺たちは楽じゃない」
       青い服の男は本田毬夫にそう言う。
       これは、お互いに、未来の人物から指令を受けた者同士だという意味か?
       だとしたら、「俺」=「青い服の男」=「三島」は未来の人間なのか?


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      (4)「噂の超能力者」 「本田青年」 
       「PK」の中に出てくる「噂の超能力者」と「超人」の中に出てくる「本田青年」こと、
       本田毬夫は、同一人物ではないかと思う。

       P27 「PK」
       「最近、噂の超能力者の話知ってる?」
       「予知能力を持った殺人鬼」
       「殺人が起きる前に、その殺人犯を殺しちゃうの」

       P109 「超人」
       「僕が殺害しているのは、放っておいたら、身勝手な殺人を犯していた
        人間たちです」 (本田青年の言葉)


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      (5)「作家」「大臣」「次郎君」

       「PK」の中に出てくる次郎君。

       
       まず、作家の言うところの「次郎君」はこう書かれている。
       P9 「テレビゲームのやりすぎで、目にゲームの色がくっついて」・・・(略)
         父親(作家)は、子供が生まれた時から、次郎君の恐怖体験をでっち上げ
         躾を行う方法を好んできた。

         
       次に大臣の言うところの「次郎君」はこう書かれている。
       P11 時計を腹に入れられた話、テレビの観過ぎ、ミシンの話などの受難物語。

       大臣が子どものころは1960年ごろと思われる。
       となると、その父親はさらに前の年代の人間である。
       であれば、その父親の友達がテレビゲームをしていたとは考えられない。
       現に、テレビゲーム云々の話をしているのは、作家であり、大臣はしていない。
       そして、作家は「でっち上げ」だと書いてある。
       わたしは、作家の場合、でっち上げというより、
       父親から聞いた次郎君話を膨らませているのではないかと思う。

       P55 彼(新人議員だったころの大臣)は、実家の庭整備の件を相談するために
          弟の住むマンションまで行く予定だった。

       とあるので、大臣には弟がいることがわかる。
       ということは、作家と大臣は兄弟か?

       
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      (6)「秘書官」「次郎君」

       「PK」と「超人」の中に出てくる大臣の秘書官と
       「PK」に出てくる、大臣の父親の友達の次郎君。
       

       P94 (超人)
        大臣は、秘書官よりも一回り年上で、還暦の手前の年齢だったが・・・(略)

       ということは、大臣が57歳ぐらい、秘書官は45歳ぐらいと想像できる。
       つまり、大臣の父親の友達である次郎君と秘書官は同一人物とは思えない。



       P15 (PK)
        「君は本当に、あの時の試合をリアルタイムでは観てなかったのか」
        「ええ」秘書官は当然のように答える。
       P44 (PK)
        秘密結社のようだ、と大臣は笑い声を立てるが、秘書官はぴくりとも笑わない。
       

       これらから、秘書官は、未来の秘密結社の一員ではないかと思われる。
       
       
       

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                 (2012年3月20日)

    時系列を考える <「PK」>


    • 「PK」を時系列に考えてみようと思う。

      1960年ごろ  ・大臣の父親の浮気は妻にばれないですむ。
      1984年    ・大臣30歳。
              ・幼児(本田毬夫)がマンションのベランダから落下するのを受け止め、救出する。
              ・その様子を小津と宇野が目撃し、勇気が湧く。
      2001年    ・ワールドカップ予選が始まる数カ月前に、
               小津は背広の男(青木豊計測技師長?)にPKを外すように指示される。
              ・サッカーのワールドカップ予選で小津がPKを決める。
      2002年    ・フランスでサッカーワールドカップが開催される。
      2011年    ・大臣は党内の幹事長に偽証することを迫られる。
              ・作家が背広の男(青木豊計測技師長?)に内容を修正するよう促される。

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                (2014年11月21日)

    時系列を考える <「超人」>


    • 「超人」を時系列に考えてみようと思う。

      1960年ごろ  ・大臣の父親の浮気が妻にばれる。
      1984年    ・大臣30歳。
              ・幼児(本田毬夫)がマンションのベランダから落下するのを受け止め、救出する。
      2002年    ・サッカーワールドカップが日本と韓国で共同開催される。
      2011年    ・警備会社の営業マンである本田毬夫が営業で三島の家を訪れる。
              ・本田毬夫のもとに大臣を殺害するよう指示するメールが来る。
              ・大臣と本田毬夫が再会する。
              ・本田毬夫が暴漢に襲われるところを、俺(青い服の男)が助ける。
                         (2014年11月21日)